似た意味の違う言葉がいろいろあって日本語って難しいですね。

類語としてよく例に挙がる言葉で「阿る」と「諂う」がありますね。

難読ですが「阿る」は「おもねる」、「諂う」は「へつらう」と読みます。

どちらかを調べるともう片方が類語の例として出てくるので、いつまで経っても違いがよくわからないことがあります。

「阿る」と「諂う」もお互いに似た言葉なので、調べていくと両方が両方を引用していてよくわからないですね。

ビジネスの場や会社での立ち振る舞いなどで、両方ともよく引き合いに出されます。

どういう違いがあるのか、考えてみましょう。

「阿る」はプラスの意味を含む言葉

おもねるとは、対人に限らず時流や権力などの様子をうかがって、それに合うようにする立ち振る舞いや、気に入られようとする態度という意味があります。親しみを示して手厚くもてなす、という意味も含みます。

漢字だと「阿」という文字を使いますが、漢字の意味を見てみましょう。

「阿」には一つ目に「山や川や岡の入りくんで曲がった場所」という意味と、二つ目に「自分の意志を曲げて人に従う」という意味があります。

一つ目の意味が転じて二つ目の意味も持つようになりました。

自分を曲げて相手の様子をうかがうというとマイナスの印象をもちやすいですが「へつらう」ほど自尊心の低さや卑屈さは感じられない言葉です。それから「時流」や「権力」といった目に見えない力の向きや雰囲気にも使うという点で「へつらう」とは異なります。

相手に合わせるということはマイナスの意味ばかりではなく、相手の意見を尊重して波風立てないようにする場合もありますよね。

相手に合わせたがマイナスの気持ちだけではない場合は、こちらの方があっていますね。

「諂う」はマイナスの意味を含む言葉

へつらうとは、上の立場の者にお世辞を言ったりして、気に入られるように卑屈に立ち振る舞う様という意味があります。

「へつらふ」という言葉は古くから使われていて、方丈記ですでに「貧しい身分で富める家の隣りにすむ者は朝晩のみすぼらしい姿を恥じて、へつらいながら家を出入りする」という意味の文章があります。

対個人相手で使う場合がほとんどで、大抵は部下から上司への見苦しいごますりや、手下が身を守るためにおべっかを頭(かしら)に言うときを表します。方丈記であったように、貧乏か裕福かも含まれるようですね。

漢字では「諂」という文字を使いますが、漢字の意味を見てみましょう。

「諂」には、自分を必要以上におとしめて媚びるという意味があります。

こちらは明確に、卑屈になって相手にお世辞を言ったりごまをすったりするという、マイナスの意味も含みます。

人間関係での立ち振る舞いでよく出てくる言葉になります。卑屈になるというのは言う自分自身も、あまり気分がいいものではありませんね。

気が進まなくても無理に相手に合わせるという意味も含みます。

卑屈でマイナスな感情を持って相手を無理矢理持ち上げる場合は、こちらの方が合っていますね。

阿るの使い方と例文

元々「山や川の入り組んだ場所」という意味を持つ漢字ですが、相手の話の流れや大衆の雰囲気の向かう方に自然に沿う場合に使います。

例文

「特に異論はなかったので、相手におもねるつもりで話を進めた」

「おもねる様子はなく、ただ相づちを打ちながら話を聞いた」

「ニュースを見ながら時流におもねる話題を家族に振った」

諂うの使い方と例文

媚びることや卑屈な気持ちを含むので、あまり気は進まないが無理に相手の機嫌をとる場合に使います。

例文

「その場は我慢して上司にへつらい、出世を狙う」

「無理にへつらうことなく、対等に商談を進められた」

「周囲の顔色をうかがって媚びへつらうのは気が滅入る」

まとめ

1.「阿る」の意味は「自分の意志を曲げて合わせる」という意味だが、相手の流れや雰囲気を歓迎して沿うプラスの意味を含む。

2.「諂う」の意味は「卑屈に媚びる」という意味だが、本意ではなく我慢して目上の相手にごまをするマイナスの意味を含む。

3.「阿る」は相手の話の流れや大衆の雰囲気の向かう方に自然に沿う場合に使う。

4.「諂う」はあまり気は進まないが無理に目上の相手を持ち上げる場合に使います。

似ていてもよく見れば微妙にニュアンスの違う言葉ですが、使いどころが難しいですね。

主観的な気持ちによって使い分けて、文章をわかりやすく伝えられたらいいですね。

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