羊はオーストラリアやニュージーランドでの飼育数が多く、世界の各地でも飼育されています。羊肉を使用しているジンギスカンがダイエットにも効果的であると人気がでました。

ひつじのキャラクターのどれもが、見ていてほのぼのとさせてくれるイメージがありますよね。

今回はそんなひつじの「野生のひつじはいるのか?」という疑問と、「ひつじのおどろきの起源」について解説していきます。

野性のひつじっているの?


日本には野生の羊は生息していません。世界では一部の地域に限り野生種の羊が生息しています。ではどのような種類の野生の羊がいるのでしょうか。その野性の羊の生息地域と特徴を紹介していきます。

野性の羊名
分布域
特徴
ビッグホーン(オオツノヒツジ)
アメリカ合衆国西部・カナダ南西部
大きな角を持っている体も大きな羊です。ロッキー山脈に生息するオスのビッグホーンの中には体重が200㎏を超える雄も確認されている。
オオツノヒツジは遺伝的にロッキービックホーン、シエラネバダビッグホーン、ネルソンビッグホーンの3亜種に別けられる。
ドールシープ
カナダ北部からアラスカにかけての北アメリカ北西部
ビックホーン(オオツノヒツジ)と外見が似ていドールビッグホーンとも呼ばれています。しかしビックホーンよりも体が小さく別の種類です。
乾燥した険しい山岳地帯に生息しており、動きは巧みで岩場などを俊敏に移動します。
ムフロン
地中海沿岸諸国
野性の羊のなかでは最も体が小さい。50~100頭程の群れをつくって生活している。そのなかで雄と雌の別のグループをつくっている。渦巻状の角を持つ。
アジアムフロン 
アジア西部
小型の野生の羊です。ムフロンと近い種類で同一種類だとされることがあります。
ウリアル
アフガニスタン・パキスタン
アルガリの亜種とされている。渦巻状の大きな角が特徴。生息環境の悪化や密猟などにより個体数が減っており、絶滅危惧種に指定されている。
アルガリ
中央アジア
標高5,000メートル以下にある高山の岩場や渓谷、砂漠、疎林などに生息している。人間による生息地の破壊、角目的乱獲、放牧による家畜との競合などにより生息数が激減している。

ムフロン、アジアムフロン、ウリアル、アルガリの種は家畜の羊の祖先種だと考えられています。

代表的な野生の羊を紹介しました。それぞれの羊の亜種などもいることから野性の羊の種類はまだ他にもいます。

家畜の羊の毛は年に数回毛刈りを必要とします。これはウールを採る為に野性の羊を品種改良した結果です。品種改良された家畜の羊の毛は自然に抜けおちません。そのままにしておくと毛で重たくなって動けなくなってしまう羊もいるようです。

野性の羊の毛の量は家畜種の羊よりも少なく、その土地にあった毛質をしているようです。多くの野生の羊は粗毛でおおわれていて毛は自然に抜け落ちるため毛刈りの必要がありません。

ひつじの驚きの起源とは!?

羊は人間の衣食住のすべてを満たしてくれる家畜動物です。羊の毛から糸を紡ぎ衣服などを作る、羊肉を食べ、羊の乳からはチーズなどの加工食品を作り出すことができます。また遊牧民の住居であるゲルにも羊の毛であるフェルトが使用されています。

いつからどのような経緯で人間が羊を家畜する生活が始まったのでしょうか。羊の驚きの起源を解説していきます。

羊の家畜化はいつから?

新石器時代に大型の野生の羊の狩猟が行われていた形跡が見つかっています。羊の家畜がはじまったのは今から約1万年前の紀元前8000年頃で古代メソポタニアの地でした。遺跡からは大量の小型の羊の骨が出土されました。これが羊の家畜をはじめた最古ではないかと考えられています。

野性の羊たちは草地を求めて移動しています。人間もそれに憑いていくように移動していました。はじめは肉を得るためだけに野性の羊を狩っていました。しかし野性の羊を待って狩るよりも、家畜化すれば簡単に肉を得ることができると思ったのです。

野性の羊を捕獲して繁殖させていくという方法です。これが羊の家畜化のはじまりです。獲物を狩る時代から飼う時代へと変化しました。羊のために草地を求めて移動する、現在のモンゴルの遊牧民族がこのスタイルです。

狩猟時代から人間によって家畜化された野性の羊たちはユーラシア大陸に生息していました。家畜化された羊の原種は「ムフロン」「アジアムフロン」「ウリアル」「アルガリ」の4種類だと言われています。

肉やミルク、皮の利用は羊よりもヤギの方が優れていました。しかし山岳や砂漠などを移動しながら暮らす遊牧民にとっては、乾燥地帯で重要な栄養源である脂肪をヤギから得ることは困難でした。そして現在においても遊牧民にとって羊の脂肪が最高の栄養源になっているのです。

羊乳はヤギの乳に比べて脂肪とタンパク質が豊富でチーズやヨーグルトといった加工にも適しています。

家畜化された羊は品種改良を繰り返されました。より良い品種の羊を作り出し世界各地への移動を繰り返していました。そして現在の家畜されている羊の姿に近づいていったと言われています。

羊毛の歴史について

羊の毛はフリースと呼ばれています。野性の羊の毛(フリース)は外側と肌に近い内側の2層に分かれています。

フリースの名前 生えている場所 特徴
上毛(粗毛、ケンプ) 外側 太く粗く長い
下毛(麺毛、ウール) 肌に近い内側 産毛のように短く細くやわらかい

家畜化された初めのころは羊の毛はまだまだ未発達段階であったため利用されていなかったようです。野性の羊は春に上毛(ケンプ)が抜ける性質があります。紀元前から人間はこの抜け落ちたケンプを使ってフェルトを作っていたと言われています。

1300年頃に現在のメリノ種が登場しました。現在私達が羊毛として親しんでいるウールは下毛を発達させるように品種改良された家畜の羊の毛です。家畜化された羊には換毛期がないため、人の手によって1年間に数回毛を刈る必要があります。

羊肉

羊肉は広い地域で食べられています。

生後1年未満の子羊肉を「ラム」、生後2年以上を「マトン」と呼び区別しています。
生後1年以上から2年未満はオセアニアでは「ホゲット」と区別して呼んでいますが、日本では「マトン」に含まれています。

ラム肉は臭みも少なく人気です。羊肉の脂肪が特に臭いため、マトンの臭みを取り除くには脂肪をそぎ落とせばよいと言われています。マトンの臭いを和らげるには調理前に牛乳に着けておいたり、香草とともに調理するなどといった方法があります。

羊の飼育が盛んな国、オーストラリアやニュージーランド、イギリス、ギリシャ、アイルランドなどでは羊肉の消費量が多いです。

まとめ

  • 野性の羊は一部の地域で生息している。
  • 飼育されている羊よりも大きく毛は粗毛。
  • 羊は今から約1万年前から家畜化されたと考えられている。
  • 羊は人間の衣食住を満たしてくれる貴重な家畜である。

遊牧民にとって羊は昔からとても貴重な家畜で、羊と共に生きるという生活スタイルが理にかなっているということが良く理解できたのではないでしょうか。
なんでも手に入る時代になりましたが昔ながらの生活スタイルを続け、伝統を引き継いでいる遊牧民と羊との関係は素晴らしいですね。

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