私達の生活に非常に密接に関係している生命保険。
一度契約すると10年や20年以上その保険会社とはお付き合いをすることになるため、契約する保険会社の経営状況を知ることは非常に大切です。

では、どうすれば保険会社の経営状況を知ることが出来るのでしょうか。

今回は、「三利源」という保険会社の本業の儲けを示すものから考えてみましょう。

生命保険とは

生命保険とは、保障内容が異なるものがたくさんありますが、要約すれば「被保険者(保険の対象となっている人)が死亡した場合、受取人が保険金を受け取れる仕組み」のことです。

日本で初めての生命保険は、慶應義塾大学の創始者である福沢諭吉さんが、ヨーロッパの近代保険制度を自著で紹介したことがきっかけと言われています。

そしてその福沢諭吉さんの門下生であった阿部泰蔵さんによって、日本初の生命保険会社である「明治生命(現在の明治安田生命)」が誕生しました。

世界に目を向けてみると、世界初の生命保険会社はイギリスのロイズ社だと言われています。

ロイズ社はもともとコーヒーハウスであり、そこに入る貿易商や船員に最新の海運ニュースを伝えていましたが、ある時にそのコーヒーハウス内で渡航に出た船が無事に戻ってくるか賭けを始めたそうです。

それが世界の生命保険の始まりだと言われています。

生命保険の始まりは実はギャンブルだったというのはなかなか驚きですよね。

生命保険会社を選ぶ際の指標は?

さて、本題に入ります。
過去、保険会社が破綻してしまった例は何件かあります。

もちろん破綻した会社を新しい会社が買収したり、契約者は引き続き契約を結んでいますが、貯蓄型の保険などでは当初の契約とは不利な条件になってしまった例も多くあります。

保険会社は一度契約すると10年~20年以上続けて利用することが多いため、契約する保険会社の経営状況を知り、契約の際の指標とすることは大切です。

一般的に生命保険はお互いに助け合う「相互扶助(そうごふじょ)」の精神」が基本となっていますが、実際には会社として利益を出さないと事業が成り立ちません。

そこで、保険会社の開示している「三利源(さんりげん)」というものを見てみるとその保険会社の事業規模や利益について知ることができます。

三利源とは、生命保険会社の本業の儲けを示しており、「利差益」「費差益」「死差益」のことを言い、基礎利益として開示されています。

そしてこの三利源が高い会社であるほど、しっかりと利益を出している会社であり、事業の将来性や安定性が見込めると言えるでしょう。

また、この三利源を生むために各社とも「予定利率」「予定事業費率」「予定死亡率」という三つの予定率を使用します。

この予定率が、各社の保険料の設定に大きく反映されています。

予定利率と利差益

保険会社は契約者から払い込まれた保険料の一部を運用して収益を上げています。
運用を開始する前に、保険会社はどれだけ運用収入を得ることが出来るか予想します。その予想した利率のことを「予定利率」と言います。

保険会社が予想した予定利率に対して、実際に得た運用収入が予想を上回る利益となった場合に「利差益」と言います。

逆に保険会社が予想した予定利率に対して実際に得た運用収入が予想を下回った場合は「利差損」となり、保険会社にとっては赤字となります。

利差益については経済の安定性に大きく左右されるため、利差損が続いてしまう場合もあり、保険会社の大きな収入源とは言い難いのが現状です。

予定事業費率と費差益

予定事業費率とは、事業を運用する上で発生する事業費(経費)の予定額です。

実際に支出された経費が、予定事業費率で見積もった額より少なくなった時に出る利益を「費差益」と言います。

よほどのことが無い限り支出される経費に大きな差は無いため、実際にはこの費差益もそこまで大きな収益とはならないと言われています。

予定死亡率と死差益

予定死亡率とは、過去の性別・年齢別の死亡率の統計を元に、契約期間中にどれだけの数の人が死亡するか予測した割合です。

この予定死亡率から将来的に支払う保険金の必要額を算出します。

この予定死亡率より実際の死亡率が低く、支払う保険金が少なくなった場合、そこで発生した利益を「死差益」と言います。

実際には保険会社が損害を出さないように、予定死亡率は高めに設定されているため、この死差益が保険会社の大きな収益となっています。

なお、死差益と似た保険用語で「危険差益」と言う言葉があります。

死差益は予定死亡率によって見込まれた死亡率よりも実際の死亡率が少なかった場
合に発生する利益のことですが、「危険差益」は予定損害率によって見込まれた損害額よりも実際の損害額が少なかった場合に発生する利益のことです。

分かりやすく言うと、死差益は「生命保険」に関しての用語であり、危険差益は「損害保険」に関しての用語となります。

損害保険でも同じように、この「危険差益」が収益の大きな柱となっています。

まとめ

  • 保険会社を選ぶ際の指標として、会社の利益を示す「三利源」(「利差益」「費差益」「死差益」)を知ることは大切です。
  • 利差益とは、契約者から払い込まれた保険料の一部を運用して出た利益のことを言います。
  • 費差益とは、事業を運用する上で発生する事業費(経費)の予定額よりも、実際に使用した事業費の差が低かった際に発生する利益のことを言います。
  • 死差益とは、予想した死亡数に対して、実際に亡くなった方の数が少なかった時に発生する利益のことを言います。
  • 生命保険では「死差益」と言いますが、損害保険の場合は「危険差益」と言い、予想した損害額に対して、実際の損害額が少なかった場合に発生する利益のことを示します。
  • 保険会社によっては三利源を開示しているため、保険契約の指標として各社を比較してみるのも良いと思います。
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