時代劇を見ていると、「~せしめんとする」という聞きなれないセリフを聞いたことはありませんか?
書物やコラムなどでも見かけますよね。

普段生活している会話ではあまり聞きなれない「~せしめんとする」という言葉。
意味は雰囲気で何となくわかりますが、合っているのかわからないですよね。

そこで今回は「~せしめんとする」について意味や使い方を徹底的に解説していきます。

「~~せしめんとする」の意味

「~せしめんとする」は、簡単に言うと「~しようとする」という意味です。
これからしていく事に対して起こす行動を表現していますね。

<例文>
「一、小原直のごとき国体明徴の観念に疑義あるものを法相に留任せしめんとすること。」
この「法相に留任せしめんとする」は「法相に留任しようとする」の意味になります。

「~せしめんとする」を分解して解説


「~せしめんとする」は「~しようとする」という意味ですが、この「せしめん」の部分がなぜ「~しよう」という意味になるのかについてお話します。

「~せしめん」を分解するとこんな感じになります。

せ(動詞 す)+しめ(助動詞 しむ)+ん(助動詞 む)

せしめんとするの「せ」は動詞「する」の未然形

「せ」はサ変動詞「する」の未然形です。
現代では「する」ですが、古文での基本形は「す」です。

サ変動詞の活用形を見てみましょう。

基本形
未然形
連体形
終止形
連体形 する
已然形 すれ
命令形 せよ

未然形というのは、日本語の用言における活用形の一つ。
「未然」はまだそうではないという意味ですので、現在でも過去でもない未来の未だに怒っていない事を表す言語です。

せしめんとするの「しめ」は使役の助動詞「しむ」

使役は他のものに何かをさせる事をいいます。
「~せる」「~させる」と訳します。

使役の助動詞「しむ」の活用形は以下の通り。

基本形 しむ
未然形 しめ
連用形 しめ
終止形 しむ
連体形 しむる
已然形 しむれ
命令形 しめよ

古典文法では、使役の助動詞「しむ」に接続する活用形は、動詞の未然形であるという決まりがあります。

よって、動詞の「す」は未然形となり「せ」がくっつきます。

せしめんとするの「ん」は意思の助動詞「む」

「む」は推量、意思、適当、勧誘、婉曲、仮定の意味を持ちます。
「~よう」「~つもりだ」と訳します。意思で使われている場合は本人が主語です。
意思の助動詞「む」の活用形です。

基本形 む(ん)
終止形 む(ん)
連体形 む(ん)
已然形

基本形、終止形、連体形、已然形の四段型の活用で、未然形に接続されるという決まりがあります。

「~せしめんとする」使い方

分解すると「せ」と「しめ」は未然形となっています。
よって「~せしめんとする」の使い方は、現在でもなく過去でもない未来の未だに起こっていない事を言い表したい時に活用するのが妥当ですね。

例文を見てみよう

「国際社会の危機問題を定義せしめんとする。」
訳:国際社会の危機問題を定義しようとする。

「中小企業が大企業を買収せしめんとする。」
訳:「中小企業が大企業を買収しようとする

「その論説は彼が患者を洗脳せしめんとする。という内容だった。」
訳:その論説は彼が患者を洗脳しようとする。という内容だった。

「彼らは最新のロケットを開発せしめんとする開発者達だ。」
訳:彼らは最新のロケットを開発しようとする開発者達だ。

まとめ

「~せしめんとする」についてまとめると、

  • 意味は「~しようとする」
  • 使い方は、現在で過去でもない未来の未だに起こっていない事を言い表したい時に使う
  • 分解するとせ(動詞するの未然形)+しめ(助動詞しむの未然形)+ん(意思推量の助動詞む)

動詞の未然形や接続される使役など、古典文法をとりあげながらわかりやすく解説しました。時には古典にふれてみるのもいいですね。

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