「互選」という言葉を耳にしたことがありますか?
ニュースにはたびたび登場する言葉なので意味を知っておいた方が良い言葉です。
その漢字からも何となく予想がついている方が多いと思うのですが、人に説明できるほどはっきりと意味が分かっている自信はない方が多いのではないでしょうか。
この言葉の意味や使い方について一緒に考えてみませんか?
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理事や評議員とは
理事と評議員とは、少し意味の似ている言葉になります。
評議員とは、評議に参加するために選ばれた人のことです。簡単に言えば、話し合いに参加する代表者ということです。評議員から構成されるものを評議会と言います。
理事とは、組織や団体を代表して、その事務を行う人のことです。
評議員が評議会の構成員の地位というのに対して、理事は管理委員の一員ということになります。
財団法人において考えてみましょう。
そこにおける理事とは、財団の業務執行機関です。理事会の中で代表となる代表理事を選定・解任も行います。評議員は、理事・理事会を監督・牽制したり、定款の変更など、重要事項の決定を行う際の意思決定機関です。
互選の意味や使い方とは
まずは広辞苑で引いてみると、「お互いの中から選挙して選び出すこと」とありました。
簡潔にまとめられているのですが、あまりにもあっさりしすぎていますね。辞典というと広辞苑かなと思い最初に引いてみたのですが、やや拍子抜けしてしまいました。
そこで日本国語大辞典を引いてみることにしました。意味は2つ書いてあり、「特定の人員の中で互いに選挙して選び出すこと」と、「俳句、短歌の会などで、参加者が互いに他人の作の選をすること」だそうです。理事や評議員を絡めて考えるには前者が当てはまると思うので、そちらの意味について考えていきます。広辞苑と似ていると思うかもしれませんが、この言葉のポイントは「特定の人員の中で選び出す」ということなのです。
これは非常に分かりやすいですね。日本国語大辞典は広辞苑よりも的を得ていると感じました。
また、日本国語大辞典では貴族院の互選が例に挙げられていましたので、それを掘り下げて考えてみます。
大日本帝国時代に存在していた貴族院は、衆議院と並んで政治の権力を持つ、帝国議会の上院でした。その名前から分かる通り、皇族や華族が議員となって構成されていました。皇族は、満18歳に達した皇太子・皇太孫と、満20歳に達したそれ以外の皇族の男子は自動的に議員になりましたが、華族はそうではありません。
華族には公爵議員、侯爵議員、伯爵議員、子爵議員、男爵議員の5種類がありましたが、公爵議員と侯爵議員が満25歳になると自動的に議員となるのに対し、残りの3つの議員は、同爵の者たちの互選で選ばれました。
つまり、「誰でも良い」と外部の人間から選ぶのではなく、選任資格のある人間の中から選ぶということです。これが「互選」という言葉のポイントになります。その団体に所属している人が、団体の中から選ぶからこそ、「互いに」という漢字が使われているのですね。
したがって、理事や評議員において「互選」という言葉を使うということは、選ぶ側の立場も選ばれる側の立場も、どちらも同じ集団に属しているという必要があるということなのです。
互選する際の方法
また、互選の特徴として、選任方法は問わないというのがあります。
何かを選ぶというと真っ先に浮かぶのが投票だと思うのですが、それに限らず、例えば話し合いなどでも構わないということです。
互選のまとめ
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理事とは、組織や団体を代表して事務を行う者のことであり、理事によって構成される会を理事会と言う。評議員とは、評議に参加するために選ばれた者のことであり、評議員から構成される会を評議員と言う。
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互選とは「互いの中から選び出すこと」であるが、ポイントは、選ぶ側も選ばれる側も、同じ特定の団体に所属している必要があるということである。
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何かを選ぶというと投票が連想されがちだが、互選の場合は投票に限らず、選任の方法も当人同士で決めることができる。
「特定の人員の中で」ということさえ理解していれば、分かりにくい言葉でもないのではないでしょうか。
こうして見ると、「互選」というのは本当に字のままであり、非常に素直な言葉である印象を受けました。